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その10
座談会 社会貢献─明日への課題<後編>

 前回に続き、社会貢献に関する専門家を交えた座談会をお送りする。社会参加としての社会貢献の議論をより一層深化し、その活動の多様な意義を探る。各企業、ひいては業界全体の活性化も視野に、今後の活動はどうあるべきかをさらに模索した。

「社会参加の動機はなんでもいい。行動するうちに、気持ちも変化」
(高橋氏)

三上 いわゆる社会貢献を、「社会参加」という言葉で捉え直すことで、より身近な活動に繋げられるような気もしてきます。これまでの活動を振り返ってみて、どのようにお感じになりますか。

 

深谷 社会参加といえば、私の経営する会社は名古屋のビジネス街にあります。そこは、放置自転車が非常に多い地域なんですね。しかも、中には、風にあおられて倒れている自転車も多く、ひどいケースでは1か月以上もそのままで、さび付いてしまっていたりするんです。それで街の景観が損なわれており、以前から私も問題だなとは思っていました。そこで、ある朝礼で、社員に対し、今日から倒れている自転車を見つけたら元に戻そうと呼びかけました。会社を訪れた人が自転車の散乱した光景を見て、どのように思うだろうか、また会社の説明を聞きにきた学生が働きたいと感じる街であると言えるだろうか、と話したんです。つまり、自転車を整理するという活動は、長い目で見れば会社の資産価値を高める活動だという話をしたんですね。

 

三上 それは、非常におもしろい取り組みですね。

 

深谷 社員たちは、その真意を理解してくれたようで、その日から地道な自転車起こしが始まりました。これは自慢できることですが、社員一人一人の力が集まれば何事も出来るんだと感心しました。皆が徹底して行ったんです。すると、どうでしょう、倒れている自転車どころか、放置自転車そのものが目に見えて減ってきたんです。

 

高橋 きれいだから、置くのをためらうようになったんですね。

 

深谷 ええ、そうだと思います。決して大きな活動ではないかも知れませんが、社員を巻き込めたことで、確実な変化がありました。社会参加にも、いろいろな形があるということでしょうね。

 

高橋 ボランティアの動機は100%善でなくてはならないといった漠然としたイメージがありますが、私は動機はなんであってもいいと思っています。皆が皆、自主性があるわけではなく、面倒くさいと感じながら始める社員が多くても当たり前です。ところが、実際に行動するうちに、人から感謝されたり、自分の力で物事を変えられる
という実感を得たりして、しだいに気持ちよくなっていく。そんなケースをたくさん見てきました。ですから、はじめはトップダウンのような形でも、きっかけを与えてあげることが大切だと思います。それが、良い面を引き出してあげるということなのではないでしょうか。そもそも、自発性のある人なら、誰かに言われるまでもなく行動しているはずですしね。

「会社の規模や給料もさることながら、社会貢献に対する態度も人を引きつける」
(小島氏)

小島 以前、5年間ほど、コソボやユーゴなどの難民に、文房具やぬいぐるみが入ったポシェットを贈る「愛のポシェット運動」に取り組んでいたことがあります。運送費などは会社が負担していたのですが、中身はお客さんに協力してもらっていたんですね。そこで、社員に、協力してくれるお客さんのネットワーク作りを持ちかけたところ、みんな精力的に働きかけ、ものすごい数のポシェットが用意でき、活動としては大成功を収めました。

 

三上 社員のやる気を引き出せたというわけですね。

 

小島 そうですね。そのほかにも、お正月にはホール内に、手作りの神社を設置し、お客さんから賽銭を集めて寄付を行うという試みも、社員の発案で行っています。お客さんは、今年も勝ちますように、なんて願いを込めて結構入れてくれるんですね。お正月期間だけで、全店で20万円以上も集まります。そういうアイデアは、若い社員ならではの発想です。今度、郊外にホールを出店することになったのですが、その空きスペースを使ってフリーマーケットをやろうというアイデアも出ています。その出展料を寄付しようという試みです。

 

三上 お客さんの意識も変わりそうですね。

 

小島 社会の中で何ができるのか、そういう発想は、ファンとホールを、より強固に結び付けますし、新たなファンの獲得にも繋がると思います。あの店ではいろいろやっているぞと、いわばボランティア会員みたいになってくれているお客さんもいますしね。

 

高橋 とくに社会参加という面では、もっと若い社員を活用し、アイデアを求めるというのは、これからの社会には必要になってくるかも知れませんね。新しい時代を作る委員会などというものを立ち上げ、運営させたりするのもいいと思います。自分の発想が具現化されることは、本人の自信にも喜びにもなるものです。そして自社を愛するようになるとも思います。ディズニーランドを経営するオリエンタルランドは、あらゆる業種の中でも、最も顧客満足度の高い企業の一つです。それはなぜか。オリエンタルランドの社員自身が、ディズニーランドを愛しているからに他ならないでしょう。自社の製品やサービスが好きなら、おのずと、お客さんにも利用して、喜んで欲しいと思うようになります。

 

小島 以前、新卒の求人を出し、訪れて来た学生に、当社を選んだ理由を尋ねたら、私の会社の社会貢献に共感したといわれたことがあります。もちろん、会社の規模や給料に引かれる学生も多いのですが、そこに行けば何ができるか、自分の存在意義を感じられるか、ということも非常に重要であることを再認識しました。

「行動も大事だが、同じく寄付金も大切。そこには、出す側の哲学と思想が問われる」
(高橋氏)

三上 社会に参加し、地元住民に支持されているといえば、深谷会長のおひざ元の愛知県遊協で行っているパチンコ文化大衆賞・福祉応援賞も挙げられると思います。

 

深谷 もともと名古屋は芸どころといわれてきたにも関わらず、それに対する関心が薄かったんですね。そこで、先代の理事長の小野金夫氏が、文化や芸能に携わる人に賞を与え、支援しようと発案したのがスタートでした。パチンコだって、言ってみれば大衆文化の一つですから、お互いに共存共栄しようと考えたんです。今では18回を数え、決してメジャーではないけれど、地域文化を底から支えている人材を数多く表彰してきました。途中からは、地道な福祉活動に取り組んでいる人に向け、福祉応援賞というのも併設しました。

 

三上 同じく賞ということでは、7月号で全国信用金庫組合が個々の信用金庫の社会貢献を表彰している取り組みを紹介しました。業界の内部から、その活動ぶりを照らし出そうという取り組みですね。

 

高橋 私は、その信用金庫の審査員も務めているのですが、あのような試みは、信用金庫同士の良い意味での競争にもなりますし、業界全体の活動の活性化にも繋がると思います。いくら“陰徳”とはいえ、やはり表彰されれば嬉しいものですしね。それと同じ考えで、私ども日本フィランソロピー協会でも、「まちかどのフィランソロピー賞」という賞を設けています。これは、社会的な寄付を行った方を表彰し、個人の寄付の文化を熟成しようというのが狙いです。

 

小島 都遊協でもいかに効果的かつ継続的な貢献活動を行うかは大きなテーマでした。私の後の青年部代表の富本さんは、小さな団体では、5万円や10万円でも非常に助かるというところも少なくないということで、寄付金が必要な団体を募集し、審査して選ぶという試みを始めました。一軒あたり20 万〜30万円が基本で毎回10グループぐらい選んでいますが、地域の片隅で地道に活動する人々に大変感謝されているようです。

 

高橋 出す側に哲学と思想があれば、寄付金は非常に尊いものです。もちろん、一緒に汗を流すことも大切ですが、社会貢献にお金が掛かるというのも事実ですからね。ところが、日本人は、寄付金に対して、どこかねじれた感情があるように思うんです。たとえば、フィランソロピー賞の第1回の受賞者が新聞に掲載されると、そんなにお金があるならウチにもくれという声が寄せられたり、さらには、売名行為だとか、税金逃れだとか、そんなことを言う人も出てくるのは、とても残念なことだと思います。深谷 免罪符代わりにお金を出しているんだろう、という声は、これまでのパチンコ業界の宿命でもありました。町内会でも、祭りのときなどには、儲けているのだからゼロを一つ多く寄越せなんて、面と向かって言われてしまいますからね(笑)。

「商店街は地域との共存共栄が不可欠。地域をもり立てる社会参加が問われる」
(高橋氏)

高橋 イメージによっては、たかられるばかり、なんてことも起こってしまうのが怖いところです。

 

日野 たしかに、地域社会に参加する、という点では、パチンコ業界のイメージも無視してはいけないと思っています。以前、商店街のあり方についての勉強会で、地域社会に関する専門家を大学から招いたことがあったんですね。すると、どこどこはパチンコ店やゲームセンターがなくて、とてもいい商店街だ、なんて話すんです。講演の後に、お礼を述べていると、ところで日野さんの職業は?と聞かれたので、パチンコ屋ですよ、と。まさか、パチンコ屋の経営者が商店街の理事長に就いているなんて思ってもいなかったんでしょう。こうしたイメージは、ちょっとまずいなと思いましたね。地域社会に受け入れられず、異端児扱いされてしまっている。

 

高橋 パトロール隊の話もありましたが、たとえば、町の安全を守る市民警察的な役割を率先して担うというように、特性を生かした活動から始めるのが一つの方法かも知れませんね。

 

日野 そうですね。実際に行動すれば、それは評価の対象になります。我々の活動を見れば、住民だって見直してくれると思います。

 

高橋 ある商店街の理事長の話で、こんなのがありました。いわく、スーパーは餌がなくなれば移動する動物だ、と。客が来なければ店を閉めて、他の場所で開業することもできるのがスーパーなんですね。一方、その方は、商店街は植物だと言っています。地域の住民から栄養をもらい、そこで育って花を開かせなくてはならない。つまり、商店街は、地域との共生関係が不可欠なんです。

 

深谷 昔は、商店街は地域社会に溶け込んでいました。お祭りでも、学校行事でも、町ぐるみの取り組みでしたしね。

 

高橋 そういった日本の伝統社会は、急速に壊れつつあります。社会参加といっても、別段、新しいことではなく、昔の日本の良さを取り戻そうという視点があれば十分なのかも知れませんね。

「いかに若い社員の気持ちを引き出し、社会と関わっていくかが今後の課題」
(深谷氏)

三上 さて、ここまで、非常に有意義な意見を聞かせていただきましたが、そろそろ、時間も迫って参りました。最後に、お一人ずつ、議論を振り返り、今後のお考えを話していただけますでしょうか。

 

小島 やはり企業には、世の中を進化・向上させるために、何ができるのかを考えることだと思います。都遊協の青年部では、「正直・親切・美化・公正」を指針にしていましたが、企業でも、そうした確固とした指針を持つことが大切だと感じました。

 

日野 社員を巻き込むという取り組みは、これまでに私の会社でも実施してきましたが、その重要性を改めて認識し、その方向性を強めていこうという気持ちになりました。良い事例を蓄積し、それを業界の中で生かしていくためにも、今日のような、意見を交換し、情報を共有できる場を、もっと増やせればとも思います。

 

深谷 いかに若い人への社会参加を呼びかけるかが勝負だと思います。ですから、若手社員が会社に誇りを持てる環境作りに、今後も力を入れて行きたいですね。早速、明日の朝礼でも、そのことを社員に話してみたいと思います。

 

三上 日遊協でも、社会貢献の側面でのさらなる発展をめざし、これまでの業界全体の社会貢献活動を集めて、その内容を分析する作業を進めようとしています。従来は、個々の団体が、個別に活動してきたのが実情で、全体像は把握されていませんでした。もう少し広い視点で活動を俯瞰することで、各団体が情報を共有できるようになり、活動内容にも広がりが出るのではないかと思っています。来年度には、「白書」のような形での発表を目指しています。

 

高橋 どの業界でも同じことだとは思いますが、いかにして、次の世代に元気な社会をバトンタッチできるか、それは非常に重要で、かつ深刻な課題でもあると感じています。パチンコは日本人の趣向に合った文化だと思いますし、やり方しだいでは、社会の反響も非常に大きいはずです。みなさんのように、確固としたビジョンを持って社会貢献に取り組んでいる社長がいると知って、とても頼もしく感じました。

 

三上 非常に中身の濃い時間が過ごせました。これからのパチンコ業界が歩むべき方向性も示すことができたのではないかと思います。それでは、みなさん、今日は本当にありがとうございました。

 

○出席者

日本フィランソロピー協会理事長 高橋陽子氏
日遊協会長 深谷友尋氏
日遊協副会長 小島 豊氏
日遊協理事 愛媛県遊協理事長 日野二郎氏
司会・日遊協専務理事 三上和幸氏