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【行政講話】警察庁生活安全局保安課 小堀龍一郎課長(6月14日/日遊協総会)

6月14日、東京・西新宿の「ハイアットリージェンシー東京」で開催された日遊協の第33回通常総会において、警察庁生活安全局保安課の小堀龍一郎課長が行政講話をおこなった。小堀課長は「環境」「社会」「ガバナンス」の観点から、業界が直面する様々な課題に対し、業界唯一の横断的組織の日遊協が率先して真剣に取り組むよう要望した。(以下、講話全文)

 本日、一般社団法人日本遊技関連事業協会の令和4年度通常総会が執り行われましたことを心からお慶び申し上げます。また、皆様方には、平素から警察行政の各般にわたり、深い御理解と御協力をいただいており、この場をお借りして御礼申し上げます。

 新型コロナウイルス感染症の感染が拡大して2年が経過し、コロナ禍で設けられた様々な制約が徐々に解除されつつあります。日遊協の総会のリアルでの開催も3年ぶりです。私自身、西村会長をはじめ執行役員の方々とは何度もお会いして話していますが、こうして会場で皆様と向き合いお話しするのは初めてとなります。

 この間、皆様方におかれましては、それぞれの立場で、感染拡大防止のための諸対策を講じられてきました。皆様の御尽力に敬意を表したいと思います。
 業界では、医療関係者の監修を得て、感染拡大予防のためのガイドラインを策定し、それ以降も順次改定してきています。また、貴協会では、「コロナ対策コンソーシアムPT」を立ち上げて、学術機関と連携し、専門的知見を踏まえた対策を推進するなどしています。このような努力の甲斐があり、今まで、ぱちんこ店の客室でクラスターが発生したという報告は受けていません。貴協会が実施した「2021年パチンコ・パチスロファンアンケート調査結果」においても、業界のガイドラインに対する安心度合いについて、多くの方からポジティブな評価がなされていると承知しています。しかし、コロナはまだ終息したわけではありません。引き続きの感染防止対策をお願いします。

  さて、平成29年の規則改正に伴う旧基準機の撤去の経過措置期間が、ようやく全ての遊技機について満了しました。皆様のこれまでの真摯な取組に敬意を表したいと思います。

  平成29年の規則改正は、平成16年の規則改正に次ぐ、大きな改正でした。私
自身、平成16年の規則改正後の入替時期に課長補佐をしていましたので、当時も業界で苦労をされていたことが思い出されます。ただ、今回は、前回と異なり、新型コロナウイルス感染症の拡大という予期せぬ事態が重なりました。
 そこで行政側では、令和2年5月に規則改正を行い、旧規則機の撤去に係る経過措置期間を1年延長しました。
 それとあわせて、業界では、パチンコ・パチスロ産業21世紀会で決議を行い、ぱちんこ営業者、遊技機メーカー、遊技機販売会社等が協力・団結し、数値目標を定めて、計画的な撤去を進めました。これは、規則上は撤去期限を1年延長するにしても、射幸性の抑制という命題が後退しないよう、また、撤去が1年間そのまま後ろ倒しになり、経過措置期間満了間際になって撤去が集中するという事態を避けるようにするものでした。業界内ではいろいろな意見があったと承知していますが、それでも最後までやり抜きました。コロナ禍の厳しい状況の中、全国の店舗で円滑に遊技機の入替が進んだのは、貴協会も含め、各団体がまとまり、計画的な撤去に向けた取組を一丸となって進めてきた結果であると認識しています。
 このように、今回の規則改正の施行では、新型コロナウイルス感染症という不測の事態を、「業界全体のまとまり」によって乗り越え、私どもも、その信頼の上で、行政を運営することができました。
 このような「業界のまとまり」は、これまでなかったことです。
 現在、業界を取り巻く課題は多岐にわたりますが、「業界のまとまり」を業界の強みにして、一つ一つの課題を乗り越えていかれることを期待します。

 全ての遊技機が射幸性が抑えられた新規則機へと入れ替わり、これから新たな遊技環境がスタートします。
 一方で、日本国内外の社会経済情勢をみますと、新型コロナウイルス感染症の感染拡大を皮切りに、大きな変化が次々と起きており、業界にも影響が生じています。
 各種の変化が世界規模で起こる中で、最近、ESGという言葉をよく耳にします。環境、社会、ガバナンスという3つの観点に配慮した行動をとることが求められ、また、これらが重要な評価基準の一つとなっています。業界も当然、その例外ではありません。
 特に貴協会では、「社会的地位の向上」を旗印の一つに掲げ、どのようにして業界全体の社会的評価を上げていくかを大きな課題と認識されています。
 そこで、本日は、環境、社会、ガバナンスという3つの観点から、業界を取り巻く課題を整理し直し、貴協会に期待するところをお話ししたいと思います。

 まず、「環境」との関わり合いについてです。
 業界では、他の業界と同様、CO2排出量削減などに取り組んでいますが、業界独自の課題として思い当たるのが、「遊技機の廃棄」についてです。
 今回の規則改正に伴い撤去された遊技機についても、相当数の遊技機が倉庫等に保管されていると聞いています。現時点で、廃棄処理のペースは問題ないとも聞いていますが、最後の最後まで、遊技機の適正な管理・廃棄が確実に行われる必要があります。
 この点、貴協会では、旧規則機の撤去に伴う廃棄の問題が懸念されていることを踏まえ、ホール営業者を始めとする遊技機の排出に関わる事業者に向け、遊技機リサイクルに関するこれまでの業界の取組や排出方法を取りまとめた「遊技機適正処理ガイドブック」を発行したと承知しています。時宜にかなった良い取組みと評価しています。
 遊技機の適正廃棄は、業界が当然果たすべき責任の一つです。これまでも遊技機メーカーを中心に廃棄システムが整備されてきていると承知していますが、それが果たして万全なものとなっているか今一度検証の上、引き続き必要な対策を講じられることを期待しています。

 次に、「社会」との関わり合いについてです。
 ぱちんこは、かねてより「身近で手軽な大衆娯楽」として親しまれています。また、ネットゲームやウェブ上の娯楽と異なり、店舗内の「リアル」な空間で楽しまれる遊技です。ぱちんこ店の数は、かつてと比べ減少しましたが、それでも令和3年末で8,458店舗あり、全国各地で地域に根差した営業をしています。
 このように、ぱちんこは、「地域の人たち」に一時の気晴らしや潤いを与え、「地域社会」に根差すことで、大正・昭和の時代から親しまれてきました。この本質は、今後も変わらないものと思います。
 業界がこれまでも、地元の方々の雇用のほか、防災活動や災害時の支援活動、社会福祉施設への支援、街の清掃活動など、地元に役立つ活動を多岐にわたり展開してきたのも、ぱちんこの地域密着性の特徴から理解されます。
 貴協会の団体会員でもあるMIRAIぱちんこ産業連盟では、東日本大震災の被災地復興支援の一環として、被災地域の清掃活動やイベント開催のほか、地元特産品をぱちんこ賞品として一定量を買い取るなど、特産品の新たな商品開発を含め、その販売をお手伝いし、地元産業の復興にも貢献されたと聞いています。工夫を凝らした取組と感心した次第です。また、貴協会ではSDGsPTを立ち上げ、今後の活動方針について議論を始めていると聞いています。
 ぱちんこ業界は、大きな産業です。これからも「同じ地域社会の一員として何ができるか」という視点からの活動を期待しています。

 また、のめり込みや依存の対策についても、同様の観点から取り組むべきものと認められます。
 ぱちんこは、多くの人に楽しみを与えますが、人によって、あるいは、同じ人でも時期によって、遊技が過度になってしまうことがあります。これは誰が悪いということではありません。ただ、現実問題として、のめり込み・依存問題で困っている人、あるいは御家族がおり、その方から「店に来たら止めてほしい」と頼まれたときには、しっかり受け止め、誠実に応えることが必要です。
 特に御家族の心情は察するに余りあります。繰り返しとなりますが、「自己申告・家族申告プログラム」の導入とその運用改善等に取り組むとともに、「地域の関係機関と連携した取組」に力を入れていただきたいと思います。
 貴協会におかれては、のめり込みや依存防止のため、基本計画に掲げられた、自己申告・家族申告プログラムの積極的な導入、利用者の負担軽減のためのマニュアルの作成、同プログラムの実効性向上のための各種取組のほか、ATMの撤去等の面で業界をリードされてきたと評価しています。引き続き、業界をリードする取組を期待しています。

 最後に「ガバナンス」についてです。
 不正排除は、最重要事項の一つです。このため業界では、これまでも、個社単位による取組に加え、業界団体による不正防止のための取組がなされてきました。

 その中でも重要な役割を果たしているものの一つが、遊技産業健全化推進機構とPSIOです。

 遊技産業健全化推進機構は、平成16年の規則改正後、業界に自浄作用を働かせることにより不正を排除しようという目的の下で、平成18年に立ち上がりました。私自身、平成19年に課長補佐に着任した当時、「業界の立ち上げた団体が業界に不都合なことをできるのか」と思いましたが、おそらく業界を知らない多くの方も、そのような認識を持たれると思います。
 しかし、機構では、平成19年の活動開始以降、ぱちんこホールに対する随時無通告の立入りを行うことで、営業者の緊張感を保たせるとともに、実際に各店舗への立入りにおいて不正改造の疑いのある事案を認知した場合には都道府県警察に通報することなどを通じ、業界からの不正排除を図っています。実際に、機構による立入検査を端緒に検挙に至った事例もあります。また、ギャンブル等依存症対策推進基本計画に基づく取組として、一昨年から営業所における依存防止対策の取組状況の確認も行い、機構による確認を経て、対策状況の改善が促されるといった成果も出ていると聞いています。
 このように、機構は、第三者機関としての位置付けを保持しつつ、業界の健全化を図るという所期の目的に沿った活動をしていると評価しています。警察としては、今後も機構と連携し、健全化のための対策を推進していきたいと考えています。引き続き、業界全体での機構の活動への協力・支援をお願いします。

 また、PSIOについても、貴協会が事務局となり、長年取り組まれていますが、実際に、PSIOの通報を端緒に検挙に至った事例もあるなど、相応の成果を上げています。このほか貴協会では、セキュリティ対策委員会の事務局としても活動されていますが、引き続き、不正防止対策の観点からも、業界をリードしていかれることを期待しています。

 コンプライアンスという観点では、個社レベルでみますと、遊技機の不正改造、賞品の買取事犯などの違法事案がいまだに後を絶ちません。個別の違反類型に関する注意事項等については、割愛しますが、風営法の遵守は、営業者の義務でありますので、貴協会からも指導を引き続きよろしくお願いします。

 以上、「環境」「社会」「ガバナンス」という観点からみた課題を述べました。貴協会は、業界唯一の「横断的組織」であり、また、平成元年に設立されて以来、一貫して「公益性」を意識し行動してきた団体です。ホール、メーカー、販売会社が抱える幅広い課題について、内輪の論理に終始せず、「社会から見られる視点」を持ちながら、あるべき姿を追い求めてきた歴史があります。

 本日述べた諸課題は、いずれも目先の利益だけを考えれば、後回しにしたくなるような課題ですが、業界の将来、業界の社会的評価を考えれば、いずれも真剣に取り組むべき課題です。だからこそ、貴協会に期待するところが大きいところであります。

 私どもとしても、引き続き、業界の健全化等を図る上で課題となる事項の一つ一つについて、真摯に耳を傾けていく所存です。

 皆様におかれましては、今一度、ぱちんこの原点を見つめ直し、新規則機を活用しながら、地域の人がほっと安心して遊べることができるような遊技環境を創り出されることを期待しています。また、そうした中で、貴協会が、その特徴を活かし、これからも、様々な視点からバランスの取れた取組を打ち出し、業界の健全化に一層ご尽力されることを期待しています。

 結びに、貴協会のますますの御発展と皆様方の御健勝、御多幸を心より祈念いたしまして、私の話を終わらせていただきます。

(以上)

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